今朝チャートを見て「あれ?」と思いました。米国のSOX(半導体指数)は前営業日に反発して上がっているのに、日経平均の半導体関連(キオクシア、東京エレクトロンなど)はまさかの急落。。。以前、僕は「日本の半導体関連株とSOXって相関係数0.8くらいあるから、SOXが上がれば日本株も大体つれ高するはず」とアテにしてポジションを取っていた時期があったので、今回のねじれを見て「あの相関係数って、どこまで信じてよかったんだっけ」と気になり、改めて相関係数の落とし穴を調べ直すことにしました。
結論から言うと、相関係数は便利な指標である一方、計算期間や相場環境が変わるとあっさり裏切ってくる、わりと繊細な数字でした。今日はその理由を数式とPythonコードで整理してみます。
相関係数(ピアソンの積率相関係数)のおさらい
2つの銘柄のリターンを x, y としたとき、相関係数 r は次の式で求められます。
r = Σ (xᵢ − x̄)(yᵢ − ȳ) / √( Σ(xᵢ − x̄)² × Σ(yᵢ − ȳ)² )
r は −1〜+1の範囲を取り、+1に近いほど「同じ方向に動きやすい」、−1に近いほど「逆方向に動きやすい」ことを意味します。0.8といえば「かなり強い正の相関」で、これを見て僕は「日本の半導体株はSOXについていく」と思い込んでいたわけです。
落とし穴①:計算期間でまったく違う数字になる
一番厄介なのがこれです。相関係数は「どの期間のデータを使ったか」に強く依存します。両方の指数が上昇トレンドだった半年間だけを切り取れば相関は高く出ますが、片方だけが個別要因(今回で言えば韓国サムスン電子・KOSPI急落)で動く局面を含めると、途端に相関は崩れます。「過去1年の相関係数」という1つの数字を鵜呑みにするのは危険で、実際には期間をずらしながら相関がどう変化するかを見る必要があります。
落とし穴②:見せかけの相関(擬似相関)
2つの時系列がどちらも右肩上がりのトレンドを持っているだけで、中身に何の関係がなくても相関係数は高く出てしまいます。これは「非定常性(トレンドがある状態)」が原因で、統計学では有名な落とし穴です。株価のように長期的に上昇しがちな系列同士を生の価格で相関を取ると、実態以上に高い数字が出やすいので、価格そのものではなく「リターン(変化率)」で相関を計算するのが基本です。
落とし穴③:相関は因果関係を意味しない
SOXと日本の半導体株の相関が高いのは「両方とも世界的な半導体需要という共通の要因に反応している」からであって、SOXが日本株を動かしているわけではありません。今回のように、片方だけに固有の悪材料(韓国発のショック)が出れば、共通要因があっても簡単に逆行します。相関係数は「一緒に動く傾向」を教えてくれるだけで、「なぜ動くか」までは教えてくれない、というのを忘れがちでした。
Pythonでローリング相関を可視化する
期間依存性を実感するために、固定の相関係数ではなく「直近60日」の相関係数を毎日計算し直す、ローリング相関を出してみます。
import yfinance as yf
import pandas as pd
# 東京エレクトロン(8035.T)とSOX ETF(SOXX)で比較
tel = yf.download("8035.T", period="2y")["Close"]
soxx = yf.download("SOXX", period="2y")["Close"]
df = pd.DataFrame({"TEL": tel, "SOXX": soxx}).dropna()
returns = df.pct_change().dropna()
# 60日ローリング相関
rolling_corr = returns["TEL"].rolling(60).corr(returns["SOXX"])
print(rolling_corr.tail(10))
print(f"直近の相関係数: {rolling_corr.iloc[-1]:.2f}")
print(f"過去2年の平均: {rolling_corr.mean():.2f}")
print(f"過去2年の最小値: {rolling_corr.min():.2f}")
実際に出力してみると、平均は0.6〜0.7あたりでも、局面によっては0.1近くまで下がるタイミングがちらほらありました。「相関係数0.8」という1つの数字だけを見て安心していた過去の自分に教えてあげたいです。
投資への応用
ペアトレードやヘッジ目的で相関を使うなら、固定の相関係数を1回計算して終わりにせず、ローリング相関で「相関が崩れていないか」を定期的にチェックする運用がよさそうです。相関が急に下がったタイミングは、共通要因ではなく個別要因が相場を動かし始めているサインとも言えるので、むしろそこにこそ注目する価値があるのかもしれません。
まとめ
相関係数は便利ですが、「いつの期間で計算したか」「価格かリターンか」「なぜ相関しているのか」を意識しないと簡単に足元をすくわれる指標だと再認識しました。今回のSOX高・日本半導体株安のねじれも、まさに相関が崩れた瞬間を見せてもらったようなものです。次はローリング相関を自分の監視銘柄すべてに定期計算させて、相関が崩れたら通知が飛ぶ仕組みを作ってみようと思います。

